社会医療法人 寿会 富永病院

社会医療法人 寿会
富永病院

富永病院

ガンマナイフセンター

ガンマナイフセンター
Gamma-knife Center

ガンマナイフとは

ガンマナイフは定位放射線治療と呼ばれる特殊な放射線治療です。
通常の放射線と異なり、ちょうど太陽の光を虫めがねで一点に集めるように、放射線を非常に小さな領域に集中させ病変に照射する方法です。従って周辺の組織(脳)は極少量の被爆ですみます。

通常の放射線治療と異なり、転移性脳腫瘍のように、再発が起こっても繰り返して治療できるのもガンマナイフの利点です。従来の開頭術にくらべ、危険性は遙かに少ない治療です。

当院のガンマナイフについて

当院では200911月にガンマナイフ治療を開始し、現在まで5,000例以上の患者さんを治療しました。全体の治療成績は約90%が有効で、合併症はてんかん、脳浮腫、などごく少数の症例に限られています。

20212月からは、さらなる最新機種であるフレーム固定とマスク固定での治療が可能なガンマナイフIconを導入しています。

現在3人の経験豊かなガンマナイフ専門医が治療を担当しており、治療は申込みからほぼ1週間以内に行われます。治療ご希望の方はまず上記3人の診察予約をとり、外来で相談してください。

医師紹介

脳神経外科 部長
ガンマナイフセンター センター長

岩井 謙育

Yoshiyasu Iwai

 富永病院 副院長
脳神経外科 顧問
神経内視鏡センター センター長

北野 昌彦

Masahiko Kitano

脳神経外科 部長

山里 景祥

Keishou Yamazato

ガンマナイフの適応疾患

ガンマナイフ治療の対象となるのは、原則大きさが3cmまでの脳疾患です。なお、Iconの導入により3㎝以上の大きな病変に対しましても分割照射により治療することが可能となりました。

主な適応疾患は、転移性脳腫瘍、聴神経腫瘍、髄膜腫、下垂体腺腫、脳動静脈奇形などです。脳腫瘍の治療後は約90%の症例で腫瘍を大きくしない効果(消失、縮小、不変を含む)があります。また最近では三叉神経痛にも良好な効果が得られており、2015年に保険適用として認められるとともに治療症例数が増加しています。

転移性脳腫瘍

最も多い治療疾患が転移性脳腫瘍です。適応は直径3cmまでの大きさの腫瘍で、治療後の腫瘍制御効果(少なくとも腫瘍を大きくさせない)は約90%です。神経症状のある場合もその改善が期待できます。病変の数が多発性にあっても1日で治療が可能であり、以前に全脳照射等の放射線治療を受けられた方にも治療は可能です。治療が短期間で終わるので、必要であれば速やかに全身化学療法など次の治療へ移っていただくこともできます。3cm以上の大きな病変に対しては、治療を分割して行うこと(2~5日)をお勧めする場合があります。

右前頭葉の転移性脳腫瘍症例

右前頭葉の転移性脳腫瘍症例 治療時
治療時
右前頭葉の転移性脳腫瘍症例 3カ月後
3カ月後
  • 3カ月後に腫瘍は消失しました。

転移性脳腫瘍(11カ所の腫瘍)の線量計画

転移性脳腫瘍(11カ所の腫瘍)の線量計画
多発性の病変にも周辺組織の被曝が極めて少ない治療が可能です。

聴神経腫瘍

片側の難聴で発症することの多い疾患です。3cmを越える大きな腫瘍では、開頭手術が適応となります。ガンマナイフ治療の適応として、大きさは2.5cm以下であり、かつ小脳失調症状や顔面のしびれ等の脳圧迫症状がないことが条件となります。治療から5~10年後の腫瘍局所制御率は約90%です。特徴としては約6割の症例で治療後3カ月2年半の間に一時的に腫瘍が膨化してやや増大します。その後徐々に縮小していきます。合併症として顔面神経麻痺の発生する確率は非常に低く、約0.5%程度であります。治療時に有効聴力のある患者さんの6割は5年後にも有効聴力が保たれています。また、手術加療が必要な大きな聴神経腫瘍に対しましても、機能温存を考えて腫瘍摘出を行い、その後ガンマナイフ治療を行うことで、神経機能を温存した治療が可能です。

右側聴神経腫瘍症例

治療時
治療時
5年後
5年後
  • 5年後腫瘍は著明に縮小しています。

髄膜腫

最も頻度の高い良性脳腫瘍で脳を包む膜から発生します。頭蓋内のあらゆる部位に発生しますが、脳の表面に近いものや大きなものは基本的に開頭手術による治療となります。ガンマナイフ治療の適応としては、脳の深部に存在し手術の危険性が高いものや径3cmまでの大きさで脳圧迫症状のないことが条件となります。手術による摘出術後に残存した病変も治療の対象です。治療後5-10年の腫瘍制御率は約90%です。

髄膜腫の症例

治療時
治療時
2年後
2年後
  • 摘出術が困難な左海綿静脈洞部の髄膜腫です。治療2年後腫瘍は縮小しています。

下垂体腺腫(非機能性)の症例

摘出術前
摘出術前
ガンマナイフ時(線量計画)
ガンマナイフ時(線量計画)
治療10年後
治療10年後
  • 49歳女性。視力視野障害で発症した非機能性下垂体腺腫を経鼻的手術で摘出しました。術後左海綿静脈同部に残存した腫瘍を含めてガンマナイフ治療を施行。治療10年後腫瘍は消失しています。

脳動静脈奇形(AVM)

典型的には、若年者に頭蓋内出血あるいは症候性てんかんなどで発症する疾患です。未治療の状態では年間に約3%の確率で出血すると言われており、出血した場合神経症状を後遺したり最悪の場合生命に危険が及ぶこともあります。治療の目的は異常な血管網を閉塞させて、結果として出血を予防することです。閉塞までは少し時間がかかり、治療から3年後の閉塞率は奇形の大きさにもよりますが、60-90%程度です。完全な閉塞が確認されればほぼ出血の危険性はなくなりますが、少しでも残った場合は出血の危険性は残ります。もし病変が残存した場合は再度治療を行い閉塞に導くことも可能です。

脳動静脈奇形症例

ガンマナイフ治療時
ガンマナイフ治療時
2年後
2年後
  • 治療2年後に脳動静脈奇形は閉塞しました。

三叉神経痛(特発性)

顔面片側の強い痛み(電撃痛と呼ばれます)が特徴的で、原因は頭蓋内の血管が三叉神経のある部分で接触していることにより起こります。開頭術により接触している血管を神経から離す手術(微小血管減圧術)により高い確率で治癒が期待できます。ただ患者さんの中にはご高齢の方あるいは全身状態が良くなく全身麻酔による手術が困難な方もおられ、このような方がガンマナイフ治療の良い適応となります。手術のように治療後すぐに痛みがなくなるわけではありませんが、治療2カ月後の痛みの緩和率は約80%です。2015年に保険収載されてから患者さんの数は増加してきています。

三叉神経痛に対する線量計画

三叉神経痛に対する線量計画
左側脳槽部三叉神経に対してガンマナイフ治療を施行しています。

ガンマナイフ治療の合併症について

病変の種類、大きさや部位によって異なりますが、治療数週~数か月後に病変周囲の脳浮腫が生じて神経症状の悪化をきたすことがあります。極めてまれですが、放射線壊死という病態に進行し外科的な治療が必要になる場合もあります。

病変が脳の表面にありかつ大きい場合には、近傍の皮膚にも放射線が当たるため、その部分に脱毛が生じることがあります。

ガンマナイフの実際

  • MRI/ CT/ 血管撮影などの画像検査
  • 治療はフレーム装着または、マスク作成
  • 治療計画作成
  • ガンマナイフ

    の順に進みます。

1㎜  以下の非常に正確な照射のため頭部を金属のフレームを頭蓋骨に固定する必要がありましたが、最新機器のIconではプラスチック製のマスクと枕で頭部を固定でも治療ができるようになり、さらに非侵襲的な治療が可能となりました。照射する放射線には痛みや発熱はありません。

分割照射と言って複数回ガンマナイフをすることがありますが、マスク固定で患者さんの負担が大幅に軽減されました。この治療で退院後仕事を休む必要はほとんどありません。

線量計画

MRI、CTスキャンなどを撮影

① MRI、CTスキャンなどを撮影し、病変部位の決定後、最も有効で周囲神経組織に障害を与えない線量計画を行います(外来あるいは入院日)。

病変に対して最も有効で周囲神経組織に障害を与えない線量計画

② 病変に対して最も有効で周囲神経組織に障害を与えない線量計画を行います。

頭部の固定

マスク固定(主に分割照射)  照射回数に応じた入院治療

マスクを作成

① マスクを作成し装着します。

ガンマナイフユニットに一体化されたコーンビームCTを照射前に撮影

② ガンマナイフユニットに一体化されたコーンビームCTを照射前に撮影し、線量計画の画像と合成することにより、正確な治療の位置を設定します。

線量計画に従って自動的に病変に照射

③ 線量計画に従って自動的に病変に照射します。
マーカーや赤外線カメラにより高い治療精度を維持しながら照射します。

フレーム固定(単回照射) 3日間の入院治療

局所麻酔と鎮静下に治療用フレームを装着

① 局所麻酔と鎮静剤(意識レベルや痛みの感じ具合を低下させる薬)の注射を行い、痛みを余り感じない状態で治療用フレームを装着します。

線量計画に従って自動的に病変に照射

② 線量計画に従って自動的に病変に照射します。実際の治療時間は病変の大きさや性状、個数により異なりますが、約15分から3時間程度です。

治療後

治療後すぐ退院していただき、疾患により1~6か月後に画像検査で治療効果や合併症の有無を調べます。

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